こわ

帰宅したら、ポストの前に裏返った封筒が落ちていた。
DMでぶち込まれるやつではなく、ちゃんと糊付けしてあったように見えたので、どこかの部屋宛のちゃんとした郵便物かと思って、宛先の主のポストに戻してやろうと思った。
さて、何号室の方か―――失礼ながら、表面の宛名を見ようとした。
部屋番号はわかった。でも送り主が、「〇〇法律事務所」と書いてあり、併せて赤字で重要・××なので必ず開けてくださいみたいなことが書かれていた。パッと見なのでちゃんとは読まなかった。
何せ都会の者なので、同じ集合住宅に住んでいても顔を合わせることは滅多にないんだけど、その部屋番号に住む人は時々見かけたことがある。話したことはない…というより、私に姿を見られるとそそくさと部屋に逃げ帰るような仕草をすることが多かった。
アジア系だったけど、日本人じゃないなというのは何となくわかった。そして封筒の宛名を見て、あっ…という気持ちになった。何をしている人なのか全く知らないけど、何となく。
ちなみに宛名のお名前はアルファベットだったけど、中国系とか韓国系ではなかった。
いやそもそも、〇〇法律事務所みたいなところから手紙が来るなんざ、日本人であるかどうか関係なしによっぽどではないか。私とてまだ世話になったことはない。


今の土地には随分長く住んでて、治安もいいし平和だし住みやすくて気に入ってるけど(もはや引っ越しがめんどくさくなったわけではないぞ)、闇はどこに潜んでるかわからんな、と思った。